北朝鮮に行くとアメリカに行けないって本当!?
2019年9月にアメリカ旅行を予定していたのですが、いきなり同年の8月5日から「北朝鮮に2011年以降渡航したことかある者はESTAが使えない。既に取得しているESTAも無効」という厳しい規則が出来てしまいました。
北朝鮮に行くとアメリカに行けない、と話題になっているアレです。結論から言うと、北朝鮮に行ったことがあってもアメリカには入れますが、手続きがスーパー面倒になります。このページでは、実際にアメリカ大使館で手続きをした経緯をお話します。
ノービザでも行けそうに思うが…?
私は2016年に北朝鮮を旅行をしたので、新しくできたアメリカの入国制限に該当します。パスポートに北朝鮮のハンコやビザは貼られていないので、ダマテンでノービザでも行けば行けそうな気もしたのですが、いままで旅行に関する法律や規則は守って生きてきましたし、現地で入国を拒否されてもイヤなので、素直にアメリカ大使館でB2ビザ(観光旅行用のビザ)を取ることにしました。
北朝鮮に行くとアメリカに行けないということではなく、ESTAというビザ免除のシステムが使えなくなるだけで、ビザが取得できれば普通に入国できるということです。
※2021年3月現在でもこの措置は継続中です。米国は一度でも入国を拒否されると以降の入国が困難になります。北朝鮮だけでなくイラン・スーダンなど、心当たりのある人は必ず在日米国大使館のビザやESTAに関するページをご一読ください。
※北朝鮮への具体的な行き方や旅行ガイドはこちらから。
米国のビザ取得は事前準備がメチャクチャ大変
日本でのアメリカのビザ取得ですが、手順をざっくり書くと
オンラインでDS-160といわれる申請書を書く→オンラインで面接(大使館で面接を受ける必要があります)の予約を取る→オンラインで手数料を払う→必要書類を集める→予約の時間にアメリカ大使館に行って面接を受ける。
という流れになります。
細かい手順は検索するとゾロゾロ出てくるので本稿では割愛しますが、アメリカ好きの北朝鮮渡航者という観点から、もろもろダイジェスト的に注意点や苦労話を書いていきたいと思います!
DS-160申請書を2時間かけて書く
一番大変なのがこれ、オンラインでの申請書作りです。DS-160と言われるメチャクチャ長いフォームに個人情報をこれでもかと書き込む必要があるのですが、基本的に全て英語。しかもタイムアウトですぐ落ちます!!
ぶっちゃけ初見では作成には2時間ほどかかると思います。事前に解説サイトなどを見て、情報を集めてから挑んだほうがいいでしょう。
記入で苦労したのは学歴とアメリカ渡航歴。学歴は中学から書いていく必要があり、私は大学・大学院・大学院その2と進んでいるので、出身校の校名や住所を英訳するだけでどえらい手間がかかりました!
そして渡航歴は最新のものだけではなく、過去の渡航歴を全部書く必要があります。しかも入国日と出国日も記入しなくてはいけません。パスポートのスタンプを調べて、ひいひい言いながらまとめました。
写真はDS-160に添付(アップロード)しなくてもよい
もう一つ大変だったのが写真の添付で、写真館で撮ってもらった写真をスキャンして添付しようとしたのですが、アップロード時に謎のエラーがでまくり、何度やってもうまくいきません。
これはあかん写真撮り直しか~と思ったのですが、写真は別にオンラインで提出しなくても良いらしく、大使館に写真を持参して、当日確認してもらえば大丈夫でした。
オンラインで面接(インタビュー)の予約を取る
面接の予約を取るのがくせ者で、どこの大使館・領事館で面接を受けるかで、面接までの最短日数が変わってきます。急ぎの旅の場合は困りますね。
東京の大使館なら最短2日でインタビューに出られますが、海外などはピンキリで、北京だと30日、台湾だと7日ほどかかるようです。都内在住の方は普通に溜池山王のアメリカ大使館で予約を取りましょう。
オンラインで手数料を払う
これはGoogle翻訳を使いながら進めれば問題ないと思います。支払方法はオンラインバンキング、Pay easy対応のATMから送金、クレジットカードとなります。お値段は17600円と結構高額でした。
必要書類を集める
この必要書類ですが、犯罪歴のない日本人が観光ビザ(B2ビザ)を受けるには、財産証明書があれば大丈夫です。
財産証明というのは「お金ならあります。アメリカで働く気はないですよ。あと不法就労しなくても日本に帰ってこられる財力がありますよ」というのを書面で伝えるということです。
一般的には銀行の預金通帳の元本を持参するようですが(アメリカ大使館のホームページにもそう書いてある)、私は電子通帳を使っているので通帳をもっておらず、手数料を払って残高証明書を銀行で作ってもらいました。
いやらしい言い方ですが「不法就労しなくてもいいくらい裕福な証明」なので、金額は多ければ多いほうがよいでしょう。預金額が百万円以下だと不利になると何かで読みましたが、詳しいことはわかりません。
残高証明書は英文ドル建てじゃないとダメ?
私はペイオフ対策で銀行口座をいくつかに分けているので、メインの三菱UFJ銀行とプレスティア(SMBC信託銀行)で取得してきました。
三菱UFJ銀行の場合、店舗・口座ステータスによっては英文&円表記での即日発行が可能(事前に口座を持っている支店へ電話で確認してください。口座のない支店では即日はしんどいかもしれません)でした。
プレスティアもほぼ同じで、英文のものが即日発行可能でした。外貨表記の場合はさらに1週間ほど必要なようです。
氏名表記は三菱UFJ銀行が手書きで住所なし。プレスティアは氏名がプリントされおり、真正の証明に行員さんの手書きサインがありました。
そのへんのビザ取得指南のブログには「英文ドル建て・氏名表記は手書きじゃなくプリントされてないとダメ」と書いてあるのですが、そこまでうるさくはないようでした(もちろん保証はしませんよ!)。
航空券とホテルの予約証明書も提出した
B2ビザの場合、アメリカ大使館のホームページに書かれている補足書類は通帳などの財産証明だけですが、日本にちゃんと帰ります、不法就労も不法滞在もしませんというのをアピールするため、航空券とアムトラックのチケット、ホテルの予約証明書も提出しました。後述するように、面接でこれもちゃんと読まれました。
予約の時間にアメリカ大使館に行って面接を受ける
さあいよいよ本番です。必要書類を持ってアメリカ大使館へ乗り込みます。基本的に地下鉄の溜池山王駅からになると思います。
溜池山王駅にはスターバックスやイートインのあるコンビニがあるので、早めに行って時間まで待機しつつ、インタビューに備えて想定問答をやっておきましょう。
なおアメリカ大使館は手荷物検査がかなり厳しく、カバンも小さなサイドバック程度のものしか持ち込めません(上記写真参照)。
溜池山王駅にはコインロッカーが多数あるので、大きな荷物はここで預けておきましょう!
アメリカ大使館へは14番出口を使うことになりますが、平日朝9時の時点では、付近のコインロッカーは7割方埋まっていました。土日の場合はそもそも大荷物を持参しないほうがよさそうです。
ちなみに14番出口を出たら、上の写真のエスカレーターを上がると大使館のほぼ目の前に出ますよ!
いよいよアメリカ大使館へ入る!
予約の時間にアメリカ大使館に到着すると、警備員さんに列を作って並べと言われます。
私の場合は平日朝だったので、列自体が短くすぐ中に入れましたが、列の先頭以外は屋根もなにもない屋外に並ぶことになるので、熱中症などが心配です。帽子とドリンクは必須ではないかと思います。
携帯電話とペットボトルは持ち込める
意外なことに、携帯電話とペットボトルは大使館内に持ち込みが可能でした。携帯電話はBluetoothをオフにすれば使ってもよいらしく、みんな中でスマホをポチポチといじっていました。大使館のホームページに書いてあるのと違って、やや驚きました。
※ただ私は念の為、機内モードにして鞄の中に放り込んでおきました。北朝鮮のスパイと思われたくないので…!?
番号札をもらって書類を提出、指紋採取を経て、いよいよインタビューに望みます!
アメリカ大使館のビザ面接に挑む!
指紋採取から30分ほどして、とうとうインタビューに呼ばれました。意外に早く呼ばれて拍子抜けしたのですが、番号札の順番をかなり飛ばされましたので、B2ビザは早く呼ばれるのかもしれません。
担当してくれるのは若いお姉さんでした。もんのすごい無愛想なのですが実はいい人のようで、私の英語力が怪しいとわかると、ところどころ日本語で応対してくれました(ややこしいケースになると、初手から日本語で話してくれるようです)。
ただ基本はやはり英語での面接で、結局全体の9割くらいは英語で会話しました。私程度の英語力でもなんとかなるくらいの質問なので安心してくださいね!
肝心の質問内容ですが、滞在場所や滞在日数などの通り一遍の質問のほかに、旅程についてけっこうあれこれと突っ込まれました。
姉「えっ競馬? シカゴまで競馬しに行くの? 競馬場は日本にもあるじゃない?」
私「馬主なんで世界中の競馬場を見て回りたいんです」
姉「どうしてシカゴに行くのに航空券がロサンゼルスまでなの?」
私「シカゴまで鉄道でいきます」
姉「なんでわざわざ鉄道?」
私「鉄道オタクなのでアムトラックに乗りたいんです」
みたいな感じで、不審な点はかなり根掘り葉掘り聞かれました。というか自分で思いましたが、われわれ公共交通オタクはやっぱ冷静に考えると不審人物ですね!
北朝鮮についても聞かれたぞ!
そうしてとうとう北朝鮮についても聞かれました。
姉「日本人はESTA使えるでしょ。どうして使わないの?」
私「2016年に北朝鮮に行ったので…」
姉「(カタカタと端末を叩いて)2016年? なにしに行ったの?」
私「単なる観光です」
が、これだけでした。これで「オッケーいいわよ~」と言われてインタビューは終了、ビザはパスポートに貼付してあとで送られてくるそうです。はぁ~疲れた~怖かった~!
北朝鮮についての突っ込みが案外少なくてビックリしたのですが、イランやスーダンに渡航した人はだいぶ前からESTAが使えなくなっているので、お姉さんも慣れているのかもしれませんね。
やはりB2ビザを取得してよかった!
書類作りはかなり大変でしたが、ダマテンでESTAを使わず、正直にB2ビザを取りに行ってよかったと思います。
北朝鮮渡航者がESTAを使えないというのは大使館の現場レベルでも周知されているようですし、DS-160記入の際にSNSのアカウントを入力する欄がありましたので、北朝鮮渡航の経験者がアメリカ入国で跳ねられる可能性はそこそこあると思います。
アメリカは一度でも入国を拒否されると、その後の入国がかなり大変になるらしいので、ダマテンで入るのは今後の人生を考えるとリスクが高すぎます。
(中国経由で北朝鮮に入った場合、パスポートにはビザもスタンプも残らないのですが、それでも危険だと思いました)
書類作成は2時間ほど必要ですが、インタビューは現場到着から大使館退出まで1時間かからない程度なので、ドキドキしながらアメリカへ向かうより、日本国内で半日費やすほうが全然よいでしょう。
ご同輩のみなさんも変なリスクは冒さず、素直にビザを取りに行ってください!
(とかいいつつ、私もまだビザが送付されていないので、取れているのか半信半疑ですが)
余談ですがアメリカ大使館は外からでも撮影不可でした!
インタビューが終わり大使館を退出し、ミッションコンプリート記念に大使館の写真でも撮ろうとスマホを構えたら、近くにいたアメリカ大使館の警備員に大きな声で静止され、かつ警官がすっ飛んできて、撮った写真を消せと言われてしまいました。
そんなに撮りたいわけでもないので別に良いのですが、一応「ここは公道ではないのですか」とお巡りさんに質問したところ、「そうなんですけど、彼らものすごい敏感になってまして…アメリカだとペンタゴンとかもダメらしいんで…ここも同じようなもんらしくて…」と困った顔で丁寧に言われました。
法律の問題ではなくお願いということのようですが、お巡りさんも警備員さんも暑い中大変そうですし、アメリカに入国させてくれと頼みに来た立場なので、大人しく従いました。
往路では全く気がつかなかったのですが、アメリカ大使館の塀をよく見ると、写真撮影はダメよ英語で小さく書いてあります。みなさんも注意してくださいね!
その後…B1/B2ビザが発行されました!
おかげさまで無事ビザが発行されました。8月9日に申請し、15日の朝に届きましたので、けっこう早いですね。
ビザ種類はB1/B2、うれしいことに10年のマルチプルです。これでESTAが必要なくなりましたので、まあ2万円近い出費も悪くなかったかな、と思います。あとは体調に気をつけて、アメリカ楽しんできます!
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北朝鮮に行くとアメリカに行けないというのはデマです。行けます。でもスーパー面倒ですという話。