競馬写真の撮影テクニックの基礎を学ぶ!
競馬写真の撮影、楽しいですよね。カメラを操作しているという漢字もたまりません。しかしポートレートや風景写真と違って、撮り方だけでなく現場での位置取り、機材のチョイスにも一癖あるのが競馬写真です。
「これだけ知っていればまあまあ撮れる」を目標に、初心者が最低限押さえておきたい競馬写真の撮影テクニックを講座形式でご紹介します。
…とかなんとか偉そうなことを言っている私も、プロとして食えるようなレベルではありません。初心者向けの入門編ということでご承知おきくださいね。元々うまい人は読む必要はありませんので、飛ばしてくださいね。
競馬用のカメラの選び方はどうする?
先日、競馬写真用にX-T4とXF100-400mmを購入し、久しぶりにシステム構成を変更しました。クラス最上位級の製品はやはり打率が違うなと驚いています。
しかし高級機でなければ撮影できないのかと言われればそうでもなく、今のカメラは高性能なので、入門機や一世代前のカメラ+廉価版の望遠レンズでも問題なく撮影できると思います。背景のボケや安定性などには差を感じますが、金額を考えると廉価版のレンズの凄さにも驚きます。
競馬撮影用のカメラとレンズに最低限ほしいスペック
とはいえ快適に撮影するためには、そこそこのAF性能(動く被写体に追随するスピードと精度、いわゆるコンティニュアスAFの性能)があり、秒5~6コマ程度が撮れるカメラだといいですね。
中級機であればフジX-T4がおすすめです。上級機であればソニーのα7IV、ニコンのZ7もしくはZ7IIあたりでしょうか。
そして我々初心者にとって何より大事なのは、バッファー容量(と書き込み速度)だと思います。
なぜなら、はじめのうちはどのタイミングで連写を開始すればよいのかわからないため、ゴールのかなり手前で連写を始めてしまい、肝心のところでバッファーがいっぱいになったり、書き込みが間に合わなくなったりで、シャッターが切れなくなってしまうからです。
なので極論すると、我々初心者やアマチュアには、高速連写性能はあればあったで素晴らしいのですが、連写しまくってもバッファー待ちで止まらない機種のほうが、結果として助かるケースのほうが多いのかなと思います。
ミラーレスカメラでも大丈夫
一昔前は競馬写真だけでなく、スポーツ写真全体がミラースカメラでは困難でした。オートフォーカスが遅いこと、ローリングシャッターがあること、ファインダーがブラックアウトすることなどが原因ですが、最近ではソニーのα7IV、富士フイルムのX-T4、ニコンのZ7など、報道レベルで使えるミラーレスカメラが続々と発売されています。
正直なところを申し上げれば、ミラーレスであっても中級機であれば心配はないと思います。先述したバッファーと、後述の高速なSDカード、そして取り回しがよくてAFの早い望遠レンズのほうが大事だと思います。
SDカードだけは高速な高級品を入れたい!
カメラ本体やレンズは廉価なものや中級機で十分ですが、SDカードの書き込み待ちで止まってしまってはシャレになりませんので、これだけはかなり高速なものを選びたいところです。
予算があるならサンディスク、手元が寂しいならトランセンドが定番です。
どちらも転送速度はClass 10以上は最低限必要で、カメラ側が対応しているならUHS-2のものを選びたいところです。
ナイター競馬でもAPS-C以上であれば問題ない
ナイター競馬の場合はノイズの関係からフルサイズカメラが有利と思われがちですが、個人的にはAPS-CサイズのX-T4でもまったく不自由していません。おそらくですが、1インチセンサー機(最近はソニーのRX100M7くらいしかありませんが)などでなければ問題ないと思います。
独断と偏見でおすすめしたい激安競馬撮影カメラセット
競馬撮影を安く、かつハイクオリテイにはじめたいという方に機材をおすすめするのであれば、まずカメラは富士フイルムのX-T30かX-T30II。レンズはXC50-230mmF4.5-6.7 OIS IIです。これであれば、10万円程度でかなりの撮影が楽しめると思います。
コンパクトで軽量、取り回しがよい上に連射能力もそこそこ高く、本当によく写ります。もう予算があるならカメラ部分をX-T4にして、レンズはXF100-400にしてはどうでしょうか。
どうしてもコンデジや1インチセンサーのカメラで撮りたいなら…。
長玉搭載のコンデジであれば撮れないことはありませんが、画質に満足がいかないかもしれません。であれば先程ご紹介したRX100M7はどうでしょうか。昼間の開催で、地方競馬であれば結構うまく撮れますよ!
私は1世代前のRX100M6を自分の馬の応援をする際に持参していますが(馬主なので川崎、門別、盛岡、水沢あたりによく行きます)、パドックからレースまで活躍してくれています。
おすすめの競馬撮影用のレンズは?
先述のように、キットレンズのような望遠ズームでも、撮れないことはありません。
しかし、競馬撮影の歩留まりを上げるにはコンティニュアスAFがほぼ必須となりますので、AF動作が早いレンズであれば理想的、ということになります。
そうなると、中級~上級向けの望遠ズームレンズ(F2.8通しやF4通し、白帯、ナノクリ、Artと呼ばれる上級ラインなど)が狙い目となるでしょうか。
焦点距離としては、よく競馬写真には70-200mm、70-210mmがよいと言われます。これは嘘ではありませんが、あまり初心者の役に立たないアドバイスです。
なぜならみなさんが撮りに行ってみようと考えているであろうJRAの競馬場では、ゴール前にガチンコの競馬カメラマンが山のように集まっており、自然と後ろに追いやられて、1コーナー側にズルズル下がることになるからです。そうなると、200mmでは全然寄りが足りません。
(浦和競馬場や船橋競馬場、門別競馬場なら70-200mmまったく大丈夫だと思います)
というわけで、場所取り合戦に連戦連勝する気合いがなければ、レンズの焦点距離は300mm~400mmは欲しいところで、場合によっては600mmくらいあっても文句はないと思います。
そこからすると、カメラのボディはAPS-C機のほうがコスト的にもサイズ的にも有利かと思います。
今回導入したXF100-400mmは換算150mm-600mmになりますが、東京競馬場のかなり1コーナー側に追いやられても、まだ望遠端に余裕がありました。逆に、人っ気のない地方競馬だと完全にオーバースペックかもしれません。
なお、今まで使っていたXF55-200mmは、レースからパドックまで過不足なく撮影でき、焦点距離としてはベストに近い取り回しだと思うのですが、AFが今ひとつ遅いのが残念なところでした。
予算に余裕があるのであれば、地方競馬用に評判のよいニコンのNIKKOR Z 24-200mm、広い競馬場用にNIKKOR Z 70-200mmとテレコンあたりが良いと思います。
構図はどんなものを撮りたいか?
機材が揃ったところでいよいよ撮影…と言いたいところですが、競馬場に出向く前に構図を考えましょう。現場で考えている暇はないです。
これはネットで競馬写真をあれこれ探して、撮りたい構図を見つけるのが良いでしょう。
競馬写真は限られたフィールドで行うものなので、構図にあまりバリエーションはありません。まず定型からはじめて、レンズや撮り方で個性を発揮していきましょう。
基本は騎手と馬の全身が入っていて、脚や頭が切れていないこと、だと思うのですが、騎手にフォーカスする、馬にフォーカスする、馬と馬の関係にフォーカスする、背景や競馬場の周辺環境にフォーカスする、逆にこれらをぼかす、ぼかさない、コミカルにする、シリアスにする、という表現もありだと思います。
新聞社のカメラマンではないのですから、セオリーから始めることは始めてみて、そこから自分なりにいじっていきましょう。
また、変わり種ではありますが、スタンドから超望遠で狙うという手もあります。
競馬中継みたいなアングルが面白いですね。上の2点は、XF100-400で撮影して、Instagramでトリミングとレタッチをしたものです。
作例というほどのものではありませんが、少し構図やテーマをいじってみた写真を何点か掲載しておきます!
テーマは馬でなくてもいいと思います。
スタートを狙っても楽しいでしょう。
二頭のゴール後。
背景にスターターさんを入れてみました。これから勝負がはじまる、という意味合いです。
縦位置の競馬写真もいいと思います。
一部を大胆に切り取ってみました。
ジョッキーをテーマに。
カメラをもって競馬場に出かけよう!具体的な撮影競馬撮影のテクニック
機材が揃って、撮りたい構図を頭に入れたら競馬場に出かけてみましょう。
先述のように、JRAの競馬場には山のように先輩カメラマンさんがいますので、無理して競り込まず、文句を言われなさそうな、適当な位置に陣取ってください。
当たり前の話ですが、ゴール前だと決勝線の時点で馬が横向き、1コーナー寄りだと馬がやや正面向きで撮れることになります。
お手持ちのレンズの焦点距離と、撮りたい構図に合わせて、いいポジションを取ってください。
競馬場によっては一脚が使えるところもありますが、フレーミングが固定されたり、機動性が悪くなるので、自分なりの撮影の型がきちんと出来ている人やガチでうまい人、レンズがデカすぎる人でないと、かえって足手まといだと思います。
カメラと露出の設定について
カメラと露出の設定ですが、露出モードは基本的にマニュアルで、芝やダートを適正露出にして、そこから+1段くらいになるようセットしてください。風景として適正だと思っても、その露出では馬が想像以上にアンダーになっています。
光線状態はレースごとに変わるので、露出は返し馬や誘導馬を撮影して決定するのが良いでしょう。
ホワイトバランスは天候に合わせてと言いたいところですが、オートでも良いと思います。
具体的な目安として、シャッタースピードは1/500程度、露出はf5.6程度になるでしょうか。そこから適宜、ISO設定で露出をいじるイメージです。
実際に競馬写真の撮る際の手順と考え方
いよいよ競馬写真撮影の本番です。
基本的な撮り方ですが、馬群が直線に入ってきたところで、各馬の位置関係や脚色を見て、どの馬を撮るか狙いを定めます。これは直線半ばくらいまでに決断してください。
(スタート時点から狙っている馬がいる場合は、帽子の色と勝負服を覚えて、最初から最後までガッチリ食らいついてください)
ここで決めた狙い馬はゴールを通過するまで、絶対に変更してはいけません。変更すると、初心者はほぼ間違いなく、フレーミングがグチャグチャになります。
直線半ば以降で狙い馬やフレーミングを変更できるのは、かなり慣れた人だけだと思います。
そして、ズームはやや広角寄りにしてください。馬も騎手も動いているので、一番カッコ良くポージング(?)できている時に、馬が近くに寄りすぎていて、騎手の顔が半分で切れている、とかだと悲しいですよね。
(逐一、構図にあわせてズームを操作している余裕は初心者にはないと思います)
構図がややルーズでも、後でトリミングすればよいだけなので、慣れるまではやや広角寄りで撮影してください。寄りすぎは救えませんが、広すぎは救えます。
オートフォーカスはコンティニュアスAF(AF-C)に
しつこいようですが、AFはコンティニュアス(AF-C)にしまょう。
動態予測モードが選べるなら、レースモードや左右に激しく動く被写体を撮るモードにしましょう。AFのスポットの広さは、やや広めがよいでしょう。
手ぶれ補正はオフにしよう
最近の望遠レンズ(やミラーレスカメラ)であれば、手ぶれ補正がほぼ搭載されているものと思います。
が、手ぶれ補正は思い切ってオフにしてください。手ぶれ補正をオンにしていると、横方向にレンズを振る際に、レンズがぶれと認識して、ほんの一瞬だけ反応が遅くなります。具体的には、フレーミングの足を引っ張られるような動作をします。
この一瞬の差が競馬写真では致命的なので、手ぶれ補正はオフが鉄則です。
ただし、レンズによっては横方向の手ぶれ補正だけをキャンセルするモード(いわゆる流し撮りモード)があったりしますので、お手元のレンズの説明書を読んでみてください。
いよいよシャッターを押す
狙い馬が決まったら、直線半ば以降でオートフォーカスを食い込ませて、ゴールに接近してもフォーカスが離れないことを確認してください。
万が一、オートフォーカスの食いつきが離れたら、大急ぎでもう一度フォーカスさせます。
狙った構図に近づいたところでシャッターを押し、ゴール板を駆け抜けるまで連写してください!!!
4コーナーの勝負所で撮影を狙うケースでも、考え方は同じです。
どうでしょうか。ややフレーミングやフォーカスは甘いかと思いますが、思っていた写真に近い一枚が撮れたのではないでしょうか!
適度にトリミングして、馬体のシャドウを起こせば、もういっぱしのスポーツ写真に見えるはずです。
流し撮りはどうするの?
流し撮りは難しいのですが、やったほうが打率が上がります。しかしこれには必勝法や裏技はなく、ただただ、もう、練習しかありません。
馬の通過にスピードを合わせて、カメラを思い切り振ってください。どうしても苦手だという人は、馬が正面向きの構図(1コーナー側から撮る)だと、流さなくてもいいので楽ですよ。
カメラをもって競馬場で会いましょう!
というわけで、基礎の基礎というか、ズブの素人がなんとかそれっぽい写真を撮るためのテクニックでした。
上達されたら是非、新しいバリエーションにチャレンジしてください。そして、あなたなりの撮り方や、お気に入りの撮影スポットを競馬場で教えてくださいね~!