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アート界隈で話題になった、朝鮮大学校と武蔵野美術大学を結ぶ階段、その後。

2016年11月14日

クラウドファンディングで朝鮮大学校と武蔵野美術大学をつないだ!?

「朝鮮大学校と武蔵野美術大学の間に立ちはだかる壁を乗り越える階段を作りたい」というクラウドファンディングが、少し前ですが話題になりました。ファインアート界隈では結構な盛り上がりだったようなのですが、北朝鮮ファン界隈では「こんなのやってるで」で話が終わってしまっていたので、朝鮮大学校に直接お邪魔して、その後の顛末を見聞してきました。

朝鮮大学校の学園祭

※訪問、写真撮影、インタビュー、Web掲載その他、全て現地で許諾を取っています。マネして突然訪問したりしないでくださいね。どえらい問題になると思いますので…。




朝鮮大学校の学園祭にお邪魔する

朝鮮大学校、普段は関係者以外立ち入り禁止なのですが、学園祭の日に限ってはキャンパスが一般開放されています(年度によって違いがあります)。なので教育学部・美術学科のアトリエも開放…されているかと思ったのですが、さすがに教室の一部ということなのか、ここは事前予約制で記名が必要でした。

朝鮮大学校美術学科のアトリエ

諸々事情をお話しして、まずは美術学科の女子学生さんに中を案内してもらいます。北朝鮮で見てきたような、男前な宣伝画や銅像がたくさんある…ということは全くなく、ごくごく普通の美術学校のアトリエでした。

朝鮮大学校美術学科のアトリエにあった作品

西洋画、日本画、朝鮮画、サブカルチュアと、様々なエッセンスが交差する朝鮮大学校だけに、学生さんの作品はどれも個性的。小生も一応美大卒なので、楽しく拝見させていただきました。アトリエの中だからとはいえ、これだけの内容が一般公開されていないのは、ちょっともったいないですね。

Fateの剣じゃないのこれ

どこかで見たような剣とコピックなんかも沢山あり、案内してくれた学生さんいわく「先輩でコミケに出てる人もいます」とのこと。このあたり、小生の母校とノリが変わりません。政治的にゴチャゴチャ言われている朝鮮大学校ですが、中の学生さんは普通に青春しつつ、創作に打ち込んでいるようです。

「件の階段」について聞いてみた

一通りアトリエを見回した後、案内してくれた学生さんに「クラウドファンディングの階段」について質問してみました。結論として、実際に階段は制作されており、通行もできるようにしたとのこと。経緯をまとめた小冊子があるというので、一部拝領することが出来ました。

朝鮮大学校にかかった階段

おお、本当に階段がかかっているんですね。とはいえお互いの学校が行き来自由になったわけではなく、朝鮮大学校側はアトリエの周辺に仕切りをつけて、一部だけを解放区にしたそうです。

どうして階段を作る必要があるの?

そして超失礼ながら小生、この話を聞いたとき「階段なんかなくても校門から出入りすればええやん。往来自由なところにわざわざ階段をかけるのは、パフォーマンスとして不自然だし、政治的すぎる」と思っていたのですが、学生さんいわく「朝鮮大学校の学生が武蔵野美術大学に行くのは問題なくて、向こうの学食でランチしたりもできる。でも逆はダメ」とのこと。

武蔵美側が発行主体かと思われる小冊子

このあたり、完全に勘違いしてました。この階段は実際のところ、朝鮮大学校の学生が外の世界に出るための階段ではなく、外の世界から朝鮮大学校への入り口をつくるための階段だったわけです。

いただいた冊子(奥付から武蔵美側が発行主体と推測)のタイトルにも「突然、目の前がひらけて」とありますし、中を読むと、両校の間に50年も突っ立ってた壁には、好奇心をかき立てる効果も、安心を与える効果もある…と、プラスの部分についても率直に書かれています。

小生は美大卒にもかかわらず、北朝鮮=壁=脱北=受け入れない○○社会…、といった思い込みで物事を見てしまったのですが、そういう話でもなかったということです。現地まで行ってみるもんですね。

階段のその後

この階段、その後どうなったのかということで、現場を見せていただきましたが…。

階段の跡地

ありゃりゃ、もうない!

階段のあと

階段の跡だけが、壁に残っていました。やはり恒常的な設備ではなかったということで、仕方ないのでしょう。案内してくれた学生さんいわく、活動としては後輩たちにバトンを渡しますとのこと。

バトンを渡す後輩がいないという件

ところが驚いたことに、今年は美術学科への新入生がゼロなのだそうです。バトンを渡そうにも、受け取る後輩がおらんやんけという状態なのですが、朝鮮大学校も生徒数が減少しており、致し方ない部分もあるのだと思います。

朝鮮大学校の階段跡地

ちょっと、寂しいですね。政治的な問題もあるのでしょうが、全寮制というのも、学生にとってはハードルが大きいのかもしれません。このへんは一介の北朝鮮ファンである小生がガーガー言っても仕方ありませんので、偉い人にバトンを渡します。

校庭で焼き肉

というわけで、思わぬ発見のあった朝鮮大学校の学園祭。そのほかにも、校庭で美味しく焼肉をいただき、モランボン楽団や律動体操のチョソン・サウンドをノリノリで堪能し、ついでにマンセーなCDを買ったり、チョソン謹製のアニメで笑ったりしながら、一日たっぷりと共和国気分を満喫したのでありました。

北朝鮮は案外簡単に行けますよ

北朝鮮は案外簡単に行くことが出来ます。学園祭のときしか開いていない朝鮮大学校より、北朝鮮のほうが入りやすいかもしれません。詳しくは「北朝鮮への行き方は案外簡単。初心者向け旅行ガイド!」をどうぞ。

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田中(あらいちゅー)

世界中の変な場所で変なものを食べ続ける、あらいちゅーこと田中です。中華料理、飛行機、カジノ、サウナ、鉄道が大好きで、北朝鮮にいったり鉄道でアメリカ大陸を横断したりと、ちょっと変わった旅をしています。詳しい自己紹介は運営者情報からどうぞ。

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